青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

祭りは地域へ帰れるか⑤〜関東のねぶた〜

 いよいよ明日には青森ねぶたの賞が発表になると思います。今年はどこが大賞になるんでしょうかねえ。
 今日は関東でのねぶたについてです。まず、僕が管見する範囲で関東でねぶたが使われている祭りを列挙したいと思います。

 
 もっとあるとは思うのですが、とりあえず僕が知っている範囲では以上です。あとは、青森県学生寮のある小平市でも寮祭で行われていたりしますし、昨年は渋谷のセンター街にねぶたが出陣したり(今年も出陣するそうです)します。


 どうしてこんなにも関東でねぶたが多いのでしょうか?僕が思うに、これは祭りのグローバル化と深く関わりがあるのだと思います。お茶の水大学の内田忠賢先生は、YOSAKOIソーランで有名な先生ですが、先生は、祭りのグローバル化について「①イノベーターたる人物の存在、②都会にフィットできる祭りの性質、③地域を代表する祭りがない、あるいは模索している」の3つの条件が都市部の祭りの成立には必要であると述べておられますが、このうち、ねぶたに関していえばとりわけ①の要素が大きいと僕は思います。青森県出身者や、ねぶたに魅せられた人、さらには、青森県と何らかのつながりを持っている地域でねぶたは主に行われます。こうして、ねぶた祭りはそのイノベーターたる人物の存在が、祭りの拡大に大きな要素を与えているのだと思います。


 このような祭りのグローバル化は、歓迎してしかるべき一方で、祭りのあり方についても若干の疑問を投げかけます。本来のねぶた祭りは「地域別の運行」ないしは「地域が集まった合同運行」というのが基本スタイルであり、ねぶたは常にその中心にいます。もちろん、羽衣のように、地域が限定されていて、ねぶたを中心にすえた祭りもある一方で、市単位、あるいは行政単位での祭りとなると、ねぶたはあくまでも「祭りの一部」「山車の一部」という扱いを受けてしまいます。これは、北海道を中心に広がっているYOSAKOIソーランもまた同様の事実だと思います。近年の関東のお祭りの特徴は、地元の伝統芸能に、ねぶたやよさこいソーランなどのグローバル化によって入り込んできた祭りを包摂する形式となっており、僕は関東の都市部に見られるこのような祭りのことを「折衷型の祭り」と呼んでいます。


 もちろん、ねぶたを祭りに取り込んでもらうためには、やむをない事実である事は、お囃子会の方にも指摘を受けました。そうでもしないと、ねぶたを取り入れてくれないことは明らかです。また、ねぶたはYOSAKOIと違って多額の予算がかかります。十万単位でかかるでしょう。ちょっとやそっとでできるようなお祭りではないのです。湘南ねぶたは今年で終わるみたいな噂も聞きました。しかし、青森県出身で、しかも、ねぶたが大好きな僕にとって、今年の柏で見てしまったあの光景はとてもじゃないですけど、耐えられませんでした。もちろん、ねぶたをショーとして扱うこと自体に関しては、僕は異を唱えるつもりはありません。それが「観光化」ということですから。でも、ショーとお祭りは全く別です。あんなねぶたは祭りとは言えません。柏ではねぶたはショーでしかないのです。その後、柏音頭のエンドレスを見てそれを改めて痛感しました。ああ、ねぶたは引き立て役以上の何者でもないんだと思いました。折衷型のお祭りの中では、ねぶたはあくまでもサブでしかなく、ショーでしかないのです。


 それは相模原でも船橋でも同じだと思います。でも、相模原と船橋が柏と決定的に違うのは、運行の一部、パレードの一部となっていた点です。パレードであれば、それは一定の許容範囲だと思います。でも、あんないかにも観光してますよ、みたいなことを祭りの中で行ってしまうことが僕にはちょっと納得ができないのです。


 このように、祭りが他地域に入るということは、そこにある伝統的なお祭りとの折衷、さらには譲歩が必要なのだということです。もちろん、羽衣のように新規でねぶたを中心として、地域を盛り上げようとする祭りのパターンもあります。しかし、関東のねぶたの大半は、折衷型の祭りの中で、その一部となっている、関東ではその問題がねぶたに常につきまとうのです。このようにしてみると、祭りのグローバル化は、祭り本来の姿を奪っているのかもしれません。


(完)


 5日間にわたって、まあ、よく自分の頭の中から搾り出して書いたと思います。これが2006年現在、自分がねぶた祭りを中心とした祭りにおいて、問題点として持っていることです。今後は、この自分の知見をどう活かしていくか、実践しアピールしていくかが課題だと思っています。ですから、この日記を見てくれたみなさんが、特にねぶた好きの方々が、現状に満足することなく、祭りを盛り上げていく力としてくれたら幸いだと思います。


 祭りは地域へ帰れるか、きっと地域の人々が地域へと還元してくれることを信じてこのコーナーを終えたいと思っています。