青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

鈴木先生をみて

 最近、ドラマきっかけで鈴木先生の全巻をそろえました。いや、この鈴木先生がいかにも自分そっくりなものだから。自分を説明するのは至極難しいんだけど、今日はそれに挑戦してみようと思います。論理的に考え、長文を書くのは久しぶりなのでいささか不安がありますが、お付き合いください。以下ネタばれですので、ドラマを楽しみにしている方は見ないでください。

鈴木先生 (1) (ACTION COMICS)

鈴木先生 (1) (ACTION COMICS)


 今日は、マンガ「鈴木先生」を紹介しようと思う。このマンガは、中学の国語教師で2年A組の担任である鈴木先生が、目の前で起こるいろいろな問題に対して、悩み、煩悶しながら、独自のメソッドで解決していくお話。
 例えば、小学校4年生の子とやってしまった男の子の話、優等生の男の子が好きな人をきっかけにそれをクラス中に公言して自爆し不登校になった話、その後同級生と関係をもってしまう話、鈴木先生が出来ちゃった結婚し、出来ちゃった結婚は是か非かについてクラス討議をする話など、内容が実に重い。




 ただ、このマンガのこれまでの教師関係のマンガと異なる点は大きく2つあると自分は思う。



 ひとつは、「どこにでもいる普通の子が問題を起こす」という点である。近年の子どもは表立って「問題児」とされる子は少ない。よくいえばそれは問題がないことであり、悪く言えば、どの生徒でも問題を起こす危険性を持っているということである。鈴木先生はその後者を実に巧みに示している。
 例えば、成績優秀な優等生が、ある事件をきっかけに好きな子の名前を自分で暴露してしまう。それがきっかけで不登校となるのだが、その後、プリントを届けに行った女子生徒が、その優等生の子に迫って関係をもってしまう。中学生の危うい社会性だからこそ、起きてしまうことである。そして、中学生がSEXについてどう考えるのか、それが来週以降のドラマの話である。




 そしてもうひとつは、「熱血教師ではない」という点である。これまでの教師といえば、金八先生と言い、熱中時代といい、いかにも問題の在りそうな生徒に対し、「熱意」や「情熱」をもって対応することで、生徒が分かってくれる、そういったものだっただろう。
 しかし、このマンガではいわゆる「熱血教師」が子どもたちによって不人気とされ、セクハラと言われ、ついには生徒の前でキレ出して、依願退職をしてしまうのである。
 その代わり人気があるのが鈴木先生。例えるならば「青い炎」だ。いつも冷静沈着。生徒に対しては、理詰めで説得。自ら煩悶しながらも、その解決方法は的確であり、生徒は納得する。そして生徒が頼ってくる。う〜ん、具体的には説明できないのでぜひともそのメソッドはマンガで確認を。
 とにかく、今の子どもも社会も多様化した時代、頼られるのは、こうしたよくいえば冷静な、悪く言えば「冷めた」教師なのかもしれないと思わせてくれます。
 



 また、この話に出てくる中学生は、マンガが進むにつれて、実に民主主義的な思考を持つようになる。
 例えば、生徒会選挙に立候補した理由が、「今の生徒会選挙の在り方を変えたい」という生徒会長の話がある。よく生徒会選挙は、生徒が大人になった時にきちんと選挙にいくための社会性を身につける場として、全員参加で行われる。しかし、この生徒は、全員参加の選挙をやめ、やりたい人だけ選挙をすればいいという方法を提案する。
 それはなぜか。それは全員参加の選挙で投票率を上げると、例えば「部活の先輩だから」「同じクラスだから」「かわいいから」と、本来の目的である「学校(社会)をよくしたい」という部分がかすれてしまい、結果として人気投票になってしまうからである。
 この立候補した生徒は、かつて小学校の時に記名式の投票に代えられ全員投票が義務付けられた結果、それまで一生懸命生徒会の仕事をやっていたのに、転校してきた子役芸能人にその座を奪われてしまったという過去を持っていた。人気があるやつに負けたのである。
 生徒会選挙を通して、選挙におけるポピュリズムの様相をものすごくよく示しています。興味がある人は8〜9巻あたりをみてください。




 これだけ活き活きと、かつ社会のことを思いながら発言する生徒がいれば、それだけ社会は活性化するのになあ…、そんなことを思わせてくれる中学校を舞台にしたマンガ。ぜひとも一読を。その他にも「ボイコットは暴力か」(7〜8巻あたり)というのがテーマになっている部分もあります。








 で、ここからが自分の話。
 自分がこのマンガを読んだ時、すごく自分に似ているなと思いました。物事を熱くならずに冷静に分析する。生徒指導も相手の話を聞きながら理詰めで行う。女子生徒のことを妄想してしまう…←工業高校だからそんなことないけどなどなど。
 1年間勤めてきて、どうなんだろう。今の2年生・3年生に対してはある程度自分は受け入れられているかもしれない。今年来た新採の先生には、「どうしてそんなに長く話せるのか」「どうして自分の話は聞いてくれないけど、先生の話は聞いてくれるのか」などと、質問された。
 ま、人によりけりなんだろうけど、自分は大人と付き合っているより、子どもたちと付き合っている方が好きだし、楽しいからね。心は永遠の中2だから。まだ大人になりきれていないんだと思います。その辺が子どもと距離が近いだけだと思うけどね。
 でも、鈴木先生のマンガを読んで、自分のしていること、考えていることはあながち間違いではないんだな、って思いました。そして、今の「普通」と「異常」を明確に区別できない世の中、子どもたちだからこそ、一歩ひいて冷静に、自問自答しながら、煩悶しながら生徒と向き合っていく教師が必要とされているのかもしれませんね。
 ということは、マンガの鈴木先生は理解者も多いけど、恨まれる部分も多いから、僕も恨まれるのかな・・・?
 個人的には、生徒のことを妄想してしまうくだりは自分的には好きです。実際の行動まで移すと懲戒免職だけど、妄想だけは自由ですから。ちなみに、僕はそんなことしません。