青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

鈴木先生をみました。

 映画『鈴木先生』を見に行きました。昨年テレビ東京で連続ドラマで放送されていたものの映画版。しかし、このドラマ、視聴率が2%とかなり低かったのですが、視聴者満足率は高く、昨年のドラマで賞を受賞するほど、中身自体は非常に評価の高いものでした。まあ、かくいう自分もそれにはまったのですが。
 以下ネタバレします。

 映画では、原作ではあったものの、ドラマでは描かれていない、生徒会選挙と、文化祭前の立てこもり事件の2つが描かれています。
 特に、立てこもり犯を演じた風間俊介の演技は最強でした。純と愛金八先生でもそうでしたけど、彼はどこか「影」をもっている役を演じさせると最強ですね。兼末健次郎みたいな感じでした。
 この2つに流れているテーマは、「制度やルールで縛り付けることで、それまでグレーゾーンで生きていた人間が生きられなくなってしまう苦しさと、それに対する批判」のように思います。
 例えば生徒会選挙では、全員投票を実現すれば、その時の気分や人気取り、ルックスなど、内容とは関係のない部分で選ぶ人が増え、その結果、地味だけど本気で考えている人が淘汰されてしまいます。
 また、立てこもりのきっかけも、彼らにとって唯一のオアシスだった、公園の喫煙所が撤去されたことでした。また、立てこもり犯はそれだけでなく、真面目にやった人間が損をし、そうじゃない人間が帳尻合わせでうまく生き、幸せになっている現状から、真面目にやっていてもいいことはないぞ、ということを教えるために立てこもり、小川蘇美をレイプしようとするわけです。



 僕は一個人としては、真面目にやった人間が損をするような社会であっても、真面目にやることの大切さを学校では教えるべきだと思っています。例えそれが「キレイゴト」だと言われようと。それに自分は、その「キレイゴト」に従って生きてきたことによって、自己実現をした人間だから。世の中にはキタナイコト、不条理なこと、そんなのごまんとあるわけだけど、それでも教師という人間は、そういうことをしないための「キレイゴト」を、並べて教えて社会に出すことが必要なんじゃないか、そんな「キレイゴト」を聞きたくないんだったら、高校だったら学校をやめて働けばいい、そう自分は思うわけです。




 また、鈴木先生が世に示しているのは、「教師=ヒーロー」であり、「生徒を劇的に変革させる存在」ではなく、「教師=人間」であり、「生徒も悩み、教師も悩み、その中で少しずつ少しずつ成長している」ということ。最近は、アイドルも、「完璧なアイドル」ではなく、悩み、苦悶し、喧嘩をし、その中でプロへと成長する、そのプロセスそのものも含めて売り出しているような気がします。



 であるならば、やっぱりヤンクミや鬼塚英吉みたいな、スカっとする教師というのは、所詮はドラマであり、鈴木先生に描かれている世界の方が、リアルなような気がします。人間は、その日に言われたからといって、明日から劇的に変わる可能性はごくわずかだと思います。毎日、毎日、少しずつ、少しずつ積み重ねていくことで、成長していくのです。
 鈴木先生が描いているのは、そんな「ごく普通の中学生」の「中学生らしい悩み」なのです。それでも鈴木先生の中で描かれている生徒は、お互いの意見をぶつけ合い、時に傷つきながらも、一歩一歩成長しています。その様子こそが、学校現場の「リアル」なんだと思います。 


 話が脇道にそれましたが、担任やって8ヶ月。担任をやったからこそ見えてくる違う視点での鈴木先生像が見えた気がします。最近話題の、「拳を上げてすぐに成果を出させる教え」ではなく、「お互いに話し合い、悩み、苦悶し、ゆっくり成果が出るような教え」が今は大切なんだと思います。すぐに成果が出ないからつらいと思います。現に僕も初担任だから、今やっていることについて、成果が出るのかは不安です。でも、やらないと成果は出ません。成果が出ることを信じてやるのみ、ですよね。そんなことを鈴木先生から教わりました。




 教育に携わっている方は、絶対に面白い映画です。ぜひ見て欲しい。☆5つ!
 全然関係ないですが、長谷川博己は本当に鈴木先生にぴったりの役柄ですよね。あと、小川蘇美役の土屋大鳳も。