読了した本 朝井リョウ『何者』
ようやく朝井リョウの『何者』を読了。基本的には淡々と進むんだけど、2ヶ所だけ、感情が高ぶるところがあるんだよね。そこは今の就活と、このソーシャルメディアの発達によって起きている、本質みたいなものを突いている感じがして、そこは面白かった。
自分が『何者』なのかがわからなくなることの不安と、『何者』というもうひとりの自分でいることへの安心感という、2つの『何者』の意味がある、って感じたね。
しかし考えてみれば考えてみるほど、「自分」というのはわからなくなる。他人から評価して欲しい反面、現代の一人で十分に生きていける分、誰からのしがらみを受けずにいきていたいという自分。
主人公は最後に傍観者でいることに酔っていながらも、でも誰かに認めて欲しいっていう自分を、きつーく責め立てられるわけだけど、そんなのねえ、大学生だったらそう思うんじゃねえかな。少なくとも僕は、主人公みたいな人間かな。
あと、教育現場で使えそうな言葉だけ引用して、感想おしまい。ここはいいな、って思ったね。だからもっと、先生を利用しなさい、ってね。
「今までは一緒に暮らす家族がいて、同じ学校に進む友達がいて、学校には先生がいて。常に、自分以外に、自分の人生を一緒に考えてくれる人がいた。学校を卒業するって言っても、家族や先生がその先の進路を一緒に考えてくれた。いつだって、自分と全く同じ高さ、角度で、この先の人生の線路を見てくれる人がいたよね」(p.213)
「そういうことだと思うんだ。自分以外の人と一緒に見てきた自分の線路を、自分ひとりで見つめるようになって、やがてまた誰かと一緒に見つめる日が来る。そしてそのころには、その大切な誰かの線路を一緒に見つめてるんだよね」(p.214)
- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/11/30
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