青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

民主主義について考える


 哲学者で有名な國分功一郎さんの新書。この方は、小平市在住でこの間東京都で初めて行われた住民投票にも携わっていた人物。その方が、この小平市住民投票をテーマに書いた一冊。
 テーマとしては、小平市住民投票を事例に、民主主義について再考するという一冊。あらゆる物事は議会(つまりは話し合い)によって決まっている、この状態を一般に民主主義というのだが、実際、今ある民主主義はそんなではなく、行政機関がその決定を行っている。しかし、我々は選挙によって立法府(議会)にはアクセスできるが、それを実行する行政権力にはほとんど関わることができない。だから、今ある民主主義をより高次なものにしていくためには、我々が行政権にまでアクセスできるような仕組みが必要である、これが基本的にこの本の主張になっています。



 民主主義について非常に考えさせられる一冊ではあるが、中央の政治というよりは、地方の政治について重きをおいて書かれている。なので、それを「民主主義」という大きな枠組みで語っていいかどうかは疑問が残る。
 しかし、地方の方が住民投票という形で、中央に比べればより直接民主の度合いが強い。強いんだけど、そうであるがゆえにより行政の色が濃く出ている。公民の教科書に「行政の肥大化」っていう単語があるけど、地方の政治は議会ではなく、首長とその執行機関(つまりは行政)が立法府(議会)に替わって政治をしている色彩が強い。
 しかし、地方でもかろうじて首長を選ぶことが可能ではあるが、実際はそこでの行政へのアクセスというのは限られる気がする。
 


 確かにオンブズマンもあるし、開かれているように見えるんだけど、この小平の問題に限らず、政治家も人々も、実は住民運動には抵抗がでかい。でかいんだけど、この小平のような行動は政治を考える上では非常に重要。




 ちなみにこの小平の住民投票(道路計画の見直しを問うもの)は、残念なことに市長が再選後、いきなり50%以上の開票率がないと公表しないという条項をつけ、結果35.17%だったため、結果は公表されていません*1。それに計画中止を求めているわけではなく、「計画を見直すべきか否か」と問うているし、別に見直すべきと決が出たところで、それに従わなきゃいけないわけでもない。それでも多分、先例を作りたくなかったんだろうね。結果は闇の中だし、この計画の認可はおりてしまったんですよね。



 この現実を、われわれがどう考えるべきか。たかだか小平の、しかも津田塾大がある辺りに住んでいる人にしか「切実ではない」問題から、考えなければいけないことがたくさんあるような気がします。中学校の公民の授業や高校の現代社会で、「地方自治」をやるにはうってつけの内容だし、その概略をわかりやすく書いています。おすすめ。

*1:ちなみにその前に行われた小平市長選挙は投票率37%。お前の選挙だって不成立だろうが、と思わず突っ込みたくなってしまいます