青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

東京大学の日本史とは

 今日は、駿台の福井紳一先生の東大日本史解説会に行きました。

 福井先生の話の深さもさることながら、改めて東大日本史で問うていることの深さを感じた。

 大問1は貴族が日記をつける理由。これはリード文を見て、当時の貴族の「すごさ」の基準が、年中行事を作法通り間違えずに行えるか、っていう、お役所が企画書の中身じゃなくて、文章の書き方でいちゃもんをつけてくるのと同じような感じのことが平安時代にも行われていて、で、それを忘れないために貴族は日記を残し、しかもそれが末代まで出世に響くので、後世にもそれを残していくっていう内容。

 大問2は鎌倉幕府の基本である、武家有利の公武二重支配と、それにともなって皇位継承に介入するまでの力をつけた幕府(北条氏)だったが、後嵯峨上皇が亡くなった後、皇位継承と荘園の支配権、院政をめぐって持明院統大覚寺統が対立し、両者がその支配権の承認を求めて、相互に幕府へ使者を派遣したことが読み取れるかという内容。

 大問3は金銀の枯渇により、長崎貿易を制限するとともに、朝鮮や琉球の知識を借りながら、輸入品として購入していた品々の国産化を指示していた資料を読み取り、このことに答えるとともに、そうした国産化した品々(砂糖、生糸、朝鮮人参)を、流通の発展とともに、都市が発達し、経済が発展していく中で、商人や武士たちがそうした奢侈品を購入することができるようになったことを読み取らせる内容。この辺りは、歴史というよりは、経済的な視点が含まれていて、内容としては深いもの。

 大問4は、近年現代とのつながりや、戦前と戦後の違いや共通点をふまえた問題が増えてきている(一橋大学っぽい問題が増えてきている)が、今年もそんな感じ。問題だけ見るとシンプルに大戦景気と特需景気が日本の経済や工業に与えた影響について説明させるものなのだが、この背後には、「戦争は経済を潤し、工業生産額を高めていく」という「本質的な構造」が見え隠れする。こうした事例を比較・検討することはこれからの授業にも求められることで、そうした問題を出してきたんだなあ、と思うとその深さを感じた。

 

 ここから分かることは、東大はシンプルに大学入試攻略法だけで解くと面白くないし、それでは高得点は取れない。やはり、政治・経済に対する基本的な認識があり、その認識をふまえた上で解いた方が、点数も取れるだろうし、何より歴史が楽しくなる。そんなきっかけを与えてくれるような4問だった。

 

 

 東大入試は実質大問1つが15分~20分で解くべきものなので、これ1つだけで50分授業ができるような気がする。これから始まる授業の視点として、東大の入試はやはり良問なのである。

 

 

 と同時に、それを東大受験生は大問1つ辺り15分で解かないといけないんだから、すごいなと。