青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

 ねぶた祭りを考える2021

 ノーナレというNHKの番組を見ました。主人公は青森ねぶた師の諏訪慎さんの娘さん。2020年、新型コロナウイルス感染拡大により、ねぶた祭りは中止。そして2021年、今年も感染拡大はおさまらず、結果として中止。諏訪さんの大型ねぶたは制作されませんでした。

 でもこの番組の最後には、諏訪さんが小さなねぶたを作って、自分の住んでいる地域だけでねぶたを運行し、その様子に涙する諏訪さんの様子が放送されていました。

 この番組をみて、この2年間の感染症の拡大は、ねぶたの本来のあるべき姿に戻るきっかけにもなったのだな、と自分は感じました。

 

 このブログが始まった2004年以降、幾度となく「観光としてのねぶた」と「地域の祭りとしてのねぶた」の対抗軸を立て、青森に住んでいた人間からすれば、「地域の祭りのしてのねぶた」が、ねぶた本来のあるべき姿である、ということを論じてきました。

 

 自分は五所川原立佞武多に長らく参加してきましたし、立佞武多が復活し、それが地域の祭りから観光資源としての祭りへ変化していく様子、それにともなって、「地域で祭りで騒ぎたい人」たちを「カラス」とレッテルを貼り、それを排除している様子への疑念、などを指摘してきました。

 幸い、2000年代から2010年代に起きたカラスハネトの問題は、ルールを定めることにより、ある程度の解決に向かい、大きな事故やトラブルなどは減ったように思います。

 しかしその一方で、奥津軽に明治時代以降伝わる「石打無用」のケンカねぶたの伝承はなりを潜めたようにも思います。

 

 

 そうして観光化が定着していった中で、2020年、2021年は「観光としての」ねぶた祭りは中止となりました。これは青森に限らず、弘前五所川原も同様でした。

 青森市の場合、ひとまずねぶたは制作していく、でも、感染拡大で結局中止、代替イベントを9月に検討、それを8月に早め、1日だけ実施、など、かなりのすったもんだがあり、結果的に22団体のうち、16団体がねぶたを制作、その後の代替イベントは結果として9団体のみの参加となりました。こうしたすったもんだの中で、作り始めた後に結果として壊したねぶたもあると聞いています。感染拡大が予測できなかった、という部分もあるかとは思いますが、こうした話を聞くと、ねぶたバカの一人としてはとてもやるせない思いになります。

 こうした実情は、観光として、商売活動としてのねぶた、というものに大きな疑問や波紋を投げかけるものになったのではないか、と思います。

 

 

 その一方、弘前市五所川原市では、独自にねぷた立佞武多を制作し、地域で運行する取り組みが行われました。五所川原市ではねぶた団体の誠和会が、一日限りではありますが、ねぶたを制作し、地域を運行。さらに五所川原高校では、2年越しに立佞武多を制作し、生徒・保護者・県内OBとOG限定ではありますが、校内での運行が行われました。東京在住の自分は参加できませんでしたが、幸いにもオンラインで視聴することができ、その雰囲気を少しだけですが、味わうことができました。弘前市でもyoutubeなどを見ると、合同運行はなかったものの、地域レベルで運行したと聞きます。

 

 

 

 この2年間の感染症拡大は、1950年以降、観光資源としてねぶた祭りを進めてきた行政や企業にとっては大きなダメージとなったと思います。しかし一方で、それでも青森県民にはねぶた好きはいっぱいいて、そうしたねぶた好きな人たちが「ローカルなレベル」で、純粋にねぶたを楽しむきっかけを作ったともいえるのではないかと自分は思っています。まさにねぶたが「地域としての祭り」に戻った、そんな2021年だったと感じています。

 

 

 改めてノーナレでは、どこからともなく聞こえるねぶた囃子に興奮する様子が描かれていました。自分もその気持ち、分かるんですよね。本当に空耳のように聞こえるというか・・・。津軽弁では「じゃわめぐ」(血が騒ぐ)というか・・・。そうして、ねぶたという伝統を絶やさない、地域での取り組み、というものを今一度、見つめなおしていく必要があると自分は思っています。

 

 

 そして、2022年こそは各地のねぶた・ねぷた立佞武多が再び行われることを切に願っています。来年こそは参加したいなあ・・・。