青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

社会系教科教育学会参加記2〜シンポジウム編〜

 まだまだ書きたいことがあるので、しばらく続きます。
 今日は午前中の課題研究についてです。
 自分は、「資源・エネルギーと環境問題をどう扱うか」に参加しました。


 パネリストは、兵庫県で高校の先生をしていらっしゃる石川先生、四天王寺大学の中本先生、そして国立教育政策研究所の樋口先生でした。



 それぞれの立場が僕の中でははっきりと分かれていたので、僕としてはとても身のある課題研究だったかなと思います。



 この問題に関して、石川先生は生徒の「質問力」をつけることが大事だろう、ということで、コンセンサス会議の手法を用いた授業を提案されていました。
 これまでこうした問題は、どうしても教師側が教材を与え、思考方法を与え、生徒に考えさせることが多い。そうじゃなく、教材や題材は与えるけど、生徒自身が専門家に「質問する」形を導入し、それに基づいて情報を収集したものを「提言する」学習方法がよいことを主張、つまり、どちらかといえば、「意思決定の手法」に注目した報告をされていました。



 一方、中本先生は、どちらかというと、「内容」に重きをおいていた気がします。福島の原子力発電の問題も、まずは記事をよんで「思ったこと」をああだこうだいわせ、問題をとらえる。その上で、それを理解するための「理論」の修得を目指します。具体的には、限界効用逓減、限界費用逓増、便益などの概念です。もちろんこれを言葉で教えるのではなく、例えば「掃除」などを事例としたシュミレーションをしながら教え、この理論を応用して、問題の解決を目指します。つまり、「理論の獲得」に注目した報告をされていました。



 それで、樋口先生は学習指導要領や、国が行っていることに準拠して、何ができるかということに注目した報告をされていました。具体的には例えば「節電を行おう」や中学校公民的分野の中で、エネルギー問題を取り上げる、などです。こうした問題は、とかく指導要領から外れたり、感情論や主観が入ったり、独自の教材研究が求められたりするのですが、普段の授業や国の考え方に、ある程度「のっかった上で」、この問題を考えてみようという提言だった気がします。



 自分も2年生の地理Bで、今年は東日本大震災を事例に、資源・エネルギー問題を扱いました。しかし、生徒に意見を聞こうにも、出てくる意見は、新聞やメディアの紋切り型だし、自分もそれ以上の知識がないから、結局、有益な授業ができず。とりわけ忙しいから教材研究が追い付かず、最後は教科書のページをそのまま知識として教えて、テストに出す、という結構自分的には納得のいかない授業をしてしまい、「なんで失敗したんだろ」って思っていたわけです。





 その原因が分かった気がしました。





 この問題の根本は、問題構造が多岐にわたっているため、ひとつのことを勉強すると、そこからさらに派生していろんな問題が出てくる。しかも、立場によって言っていることも違うから、そこでさらに勉強しなくてはいけない、という袋小路に陥ってしまうわけです。
 だからこそ、切り口を何にして授業をするのか、つまり、生徒に意見を言わせたいのか、エネルギーに関する理論を獲得させたいのか、によって扱う内容、扱う方法が変わってくるわけです。



 さらにいえば、この問題は主張によって、それを支えている知識が異なる(トゥールミン図式でいえば、Dataの地点で異なってくる)ため、扱う内容が難しく、しかもそれをいちいちこっちが説明すると、生徒が全然ついてこなくなるわけです。
 だからこうした問題で一番大事なのは、生徒から意見を出させること…なわけなんですが、それをただ出すだけじゃなく、石川先生が言っていたような「質問力」=「僕(教師)に何を調べてきてほしいか」を言わせることが大事なような気がしました。その方が、僕も生徒に合わせた情報が言えるし、生徒も知りたい情報が手に入るわけです。





 こうしたオープンエンドな、明確な答えのない議論は、理論の習得も大事だけど、僕は個人的には、知識を知識として与えながら、思ったことや考えたことをきちんと生徒に書かせたり言わせたりし、さらにそこから、「調べてほしいこと」を生徒に言わせながら、双方向でやりとりしていくことが重要なのかな、と思いました。





 その意味で、午後の河原先生の、「TPP」と「消費税」の問題を、生徒が一生懸命考えた公民の授業報告は、とてもためになりました。3年間かけて、社会科とは、文章を書く科目(社会事象や自分の考えを説明する科目)だと言い続け、それを授業でやっていった結果だと思います。
 一朝一夕で社会科はできないんだな、って感じさせてくれた報告でした。








 ただ、やっぱり面白いのは、授業の型によって、生徒がとる学習方略は異なるよ。今年の地理Bは「文章を書かせる(説明させる)」にチャレンジしてみたけど、「知識を覚える」のと、「文章を書く」では、成績に若干の差が出るもん。




 生徒と一緒に作りながら、生徒にああのこうの言わせながら、授業を作っていくことの重要性を感じました。特に、「質問力」。これ大事。