「わかり方」の探究
佐伯胖氏の「わかり方」の探究を読みました。これも課題図書だったんで。
- 作者: 佐伯胖
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/07/08
- メディア: 単行本
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この本は教育心理学っぽい本だけど、それを実例を含めて分かりやすく書いています。しかも「わかる」や「考える」「笑う」「泣く」とそれぞれカテゴリーがあって、それぞれ教育的にどんな意味や意義があるのかを書いています。
今回はその中から自分が将来考える(かもしれない)「考える」とはどういうことか、を取り上げて書評とします。
以下の問題をみてください。
おやつをかいにいきました。
あめだまを5つ買うと、まだ20円のこっていました。
そこで、あめだまを全部で7つ買うことにしました。
すると4円しかのこりません。
あめだまは1個いくらですか?
この問題、あなたならどうやって解きますか?
中学生以上なら「あめだまをX」にして一次方程式で解くのではないでしょうか。
この問題は今は中学生の範囲だと思われます。
実はこの問題が小学校2年生でも解けるということを示した先生がいるんです。
先生のやり方はこうです。
第1段階 問題文を読んで解かせる。
第2段階 買う人になって考える。(子どもに「キミならどうする?」と問う)
第3段階 売る人になって考える。(お店屋さんごっこをする)
実践にもよりますが、この先生のデータによれば第3段階までで実に8割の子どもが解けたというのです。
この実践例から氏はピアジェが提唱するような「子どもには子どもにとって教えるべき段階がある」という考え方の落とし穴を指摘し、小学2年生でも「お店屋さんごっこ」などの実際の場面をシュミレーションさせることで子どもが自発的に買うものを覚えようと勤めることができるのだというイストミナの研究を例に出します。
このように「考える」ことは人間のおかれた環境や文化(子どもの体験等)と密接に結びついており、そうしたものと結びつく活動をすることによって子どもが「考える」ことを指摘します。
ではこうした結びつきを授業でするにはどうしたらいいか、氏は?エピソード化、?多元的機能化、?モデル化の三種類の働きかけがあることを指摘します。そして氏にとって「考える」とは「多様な視点でものを見ること」にあると言っているように私は感じました。
従来、小学校の授業もこの「考える」の理論に沿えば、お店屋さんごっこや地域教材を使った授業など、子どもが「考える」ために必要な材料を提供しているように感じられます。しかし、子どもが「考えない」のはなぜか。それは?の視点、つまり多様な視点でものを見るという考え方が不足しているからなのだと思います。世の中にはいい面もあれば、悪い面もある。これは極端な例だと思いますが、そうした価値の多様性を提供することが、自分で考えるための第一歩なのだということを改めて感じました。
その他にも認知に関して刺激的な論考が数多く載っています。特に小学校の先生なら「内側から見る」とはの項目を読むだけでもいいかと思います。ここは純粋にハッとさせられました。