社会科教育ゼミ1
昨日は、毎年恒例(?)の卒業生ゼミでした。
が、今年は今筑波大にいる院生が運営してくださり、岡山大学の院生との共同研究会という位置づけでやることになりました。
すいません、何も運営も口出しもせず。
今年は5本の発表でした。
1本目は、学部生が世界史で「なぜ、17世紀にオランダでチューリップバブルが起こったのか」という主発問で探求授業を行っていました。
普通、こうした授業って「チューリップ」という子どもが興味をひきそうなところを中心に授業をしがちですが、これだと実はうまく授業ができません。
なぜならそれはたまたま「チューリップ」だっただけだからです。
この授業では、オランダ以外の国、例えばイギリスやフランス、神聖ローマ帝国といった国々ではなく、オランダだったというところの探求から始まります。そこにからんでくるのがキリスト教の宗派の違い。
中学校で習ったとおり、この時代にはプロテスタントが出てくることになります。その中でもオランダはカルヴァン派。カルヴァン派の思想は簡単にいえば、蓄財をすることが功徳になることだということ。乱暴に言えばもうけることが功徳につながる、ということになります。
このカルヴァン派のもとに、ヨーロッパの商人たちが集まり、貿易港として栄えていきます。
もちろん、これには政治的(他国では戦争や王朝の交替があったこと)なども含まれていますし、後の指摘で出たのは、法システムの問題もあるとは思いますが、まあ、教科書的に言えば宗教的特徴に焦点を当てるのでよいのではないかと。
そして肝心のチューリップだった理由は、一言で言えば投機の対象だった、ということです。カルヴァン派は蓄財をすることこそ功徳だと考えます。ということは、お金を貯めたい、もうけたいわけです。そのため、当時オランダで希少価値の高かったチューリップの球根を手に入れ、それを転売すれば差額で儲けることができる、商人たちはそう考えて、チューリップの球根を手に入れるわけです。
と同時に、オランダ(商人たち)の中で、投資が行われていた、ということも見逃せない事実だと思います。この時期にはオランダ東インド会社(今の株式会社の原型)ができるなど、17世紀には資本主義の原型みたいなものが生まれてくるわけです。
しかもすごいのは、貧乏人も球根を買っていた(つまり儲けたかった)ということ。こうして竹材で得たお金を元手にさらに蓄財をするということを、この時代の人々は考えついたわけです。
っていうのを1〜2時間でやるって感じですかね。実際の模擬授業では、
1.他国ではバブルが起きなかった国際的な背景
2.チューリップの球根そのものの理由にこだわったこと
この2点によって、授業がだらだらしていました。
また、この授業は「17世紀のヨーロッパ史」と「バブル経済(資本主義の萌芽)」という2つの学習目標が半分ずつ存在しているので、それを1時間で、という難しさもありました。
代案としては、国際的な背景は、資料を見せながら調べ学習をさせる、チューリップの部分は、球根そのものではなく、例えば資料集に載っているカルヴァン派の服装(地味な服装)から、「彼らは何にお金を使っていたんだろう?」と問う、資料が用意できるなら、貧しい人たちもチューリップに投資していた文章や図資料などから、「貧しい人たちがチューリップの球根を買うということは、何を目的にしているんだろう?」みたいな問いを用意して、「投機」という部分へ持っていくなどが挙げられていました。
今回のコンセプトは、普段の授業(教科書や資料集にある資料を活用して)で改善を行うということだったので、こうした試みが本来、このゼミの趣旨なんですよね。結局、子どもたちって学校の大半は授業を受けているわけだし、その授業が面白くなければその先生を信頼しないよね。
・・・やっぱり来年は授業を持っていこう、そう反省させられました。