青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

本読みました

 14歳の世渡り術シリーズについに歴史学が登場しました。はっきりいって、歴史学を習っている人にとっては「当たり前」のことしか書かれていませんが、でも、中高生で、普段の歴史(日本史)の授業に飽きている人にはオススメです。
 1970年代のポストモダンの思想以降に入ってきた、構成主義構築主義歴史観によって、さらに発展史観の最終進化形であった社会主義国家の相次ぐ崩壊によって、実証主義かつ、社会をよりよい方向に向かっていこうとしていた歴史学という学問は、その批判に応えられることができず、特に1990年代以降に、それが顕著となりました。
 そんな構成主義構築主義、まあ、もっと平たく言えば「歴史は解釈でしかなく、真実は存在しない」という歴史観を享受しつつ、でも、歴史学のポジショナリティみたいなところもあるよね、って語れる歴史家って、この本を書いている成田龍一さんが最先端をいってるんじゃないかな。多分、他の学問から「歴史学って役に立つの?」って聞かれたときに、「こうだ」と分かりやすく言える唯一の存在だと思う。


 この本は、戦後史を中心に「歴史は解釈である」という論を前提にし、でも、他の学問みたいに「だから歴史学はダメなんだ」っていうんじゃなく、例えばマイノリティからの「視点」など、様々な視点があるんだ、ってこと、あるいは、歴史を見ると、ある時を基準にいきなり全てが変わったように見えるけど、実はそんなことはない、緩やかに、でも確実に歴史は変わっているんだ、っていうことをかなりわかりやすく説明しています。



 1960年代にE.H.カーが「歴史とは何か」という本を書いているが、それを今の時代背景をふまえて、中高生にも読めるようにわかりやすく書いているっていう感じの本かな。
 今の勤務校では、生徒の学力的にも教科書を追うのでいっぱいいっぱいだけど、ある程度の学力があって、歴史に興味がある中高生になら読ませてもいい本。これでゼミとかやらせると面白いかもね。