本読みました
戦後日本史の考え方・学び方: 歴史って何だろう? (14歳の世渡り術)
- 作者: 成田龍一
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/08/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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1970年代のポストモダンの思想以降に入ってきた、構成主義や構築主義の歴史観によって、さらに発展史観の最終進化形であった社会主義国家の相次ぐ崩壊によって、実証主義かつ、社会をよりよい方向に向かっていこうとしていた歴史学という学問は、その批判に応えられることができず、特に1990年代以降に、それが顕著となりました。
そんな構成主義や構築主義、まあ、もっと平たく言えば「歴史は解釈でしかなく、真実は存在しない」という歴史観を享受しつつ、でも、歴史学のポジショナリティみたいなところもあるよね、って語れる歴史家って、この本を書いている成田龍一さんが最先端をいってるんじゃないかな。多分、他の学問から「歴史学って役に立つの?」って聞かれたときに、「こうだ」と分かりやすく言える唯一の存在だと思う。
この本は、戦後史を中心に「歴史は解釈である」という論を前提にし、でも、他の学問みたいに「だから歴史学はダメなんだ」っていうんじゃなく、例えばマイノリティからの「視点」など、様々な視点があるんだ、ってこと、あるいは、歴史を見ると、ある時を基準にいきなり全てが変わったように見えるけど、実はそんなことはない、緩やかに、でも確実に歴史は変わっているんだ、っていうことをかなりわかりやすく説明しています。
1960年代にE.H.カーが「歴史とは何か」という本を書いているが、それを今の時代背景をふまえて、中高生にも読めるようにわかりやすく書いているっていう感じの本かな。
今の勤務校では、生徒の学力的にも教科書を追うのでいっぱいいっぱいだけど、ある程度の学力があって、歴史に興味がある中高生になら読ませてもいい本。これでゼミとかやらせると面白いかもね。