歴史(学)入門書として
- 作者: 山本博文
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/10/17
- メディア: 新書
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ようやく読了。この本は江戸時代の研究者として知られる山本博文氏が、自らの歴史学というポジショナリティを明示しながら、歴史を学ぶ技法について述べたもの。
特に歴史小説や社会史、網野史学や司馬史観など、いわゆる我々が歴史に触れやすい分野について、歴史学という立場からあれこれと論じています。
一貫して通っているのは、歴史学というポジションを守り、いわゆる「歴史」と呼ばれるものと「学問としての歴史」とがどう違うのか、どう共存できるのか、について書かれている(と読み解いた)。
また、氏なりの古代から日露戦争ぐらいまでの通史が描かれているのだが、それを「天皇」という位置から見ているというのが(多分、歴史学では常識なのかもしれないけど)、自分にとっては面白かったかな。武家政権になっても何だかんだで公家(天皇家)を頼っていることや、様々な内乱や反乱は、皇位継承問題と大きく関わっていること、などね。
歴史学を学んでいる人にとっては当たり前すぎて面白くもなんともない本だと思うが、いわゆる大学1年生で歴史を学問として学ぶ人にとっては、ぜひとも読んだほうがいい本。これを導入に、網野史学やアナール学派、世界システム論など、さらに派生していけばよいのではないかと思う。
また歴史を教える教員にとっても、教科書とはまた違う視点で歴史をとらえられるという点ではおすすめできる本。また、歴史教育を語りたい、という学生にもその導入としておすすめ。