青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

本田由紀『教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ』(ちくま新書、2009)

 本田先生の考えは、去年の7月に日本カリキュラム学会で聞き、非常に感銘を受けた一方、知っていた考え方だったので買うかをためらっていましたが、実業系の高校に就職が決まったので、改めて購入して読み返してみました。




 この本では、タイトルにもある「教育の職業的意義」と本田氏が定義するものが、いかに日本では軽視されてきたか、また、軽視されているかについて、これまでの社会構造と教育との関係を通して述べられている。




 本田氏は教育の職業的意義を高めるためには、仕事をする際の、<抵抗>と<適応>の両面を重視した教育が必要であると述べる。<抵抗>とは、働く者すべてが身につけておくべき、労働に関する基本的な知識であり、<適応>とは、個々の職業分野に即した知識やスキルである。<抵抗>の術を知っていれば、働かせる側の理不尽な要求に対し、法律や交渉などの手段を用いて抵抗できるはすだし、<適応>の術を知っていれば、自分のスキル、得意分野を活用して社会で働いていくことができる、そういう側面を持っていると本田氏は述べる。




 とりわけ「教育の職業的意義」と似て非なる文部科学省推奨の「キャリア教育」を、「夢を持つこと」「自己実現すること」を強要しているため、ダンサーやトリマーなど、人気が高く、希少で、学歴不問のASUC職業ばかりを追いかけてしまっていること、求める能力が先に挙げたような「自己実現能力」や「生きる力」のような「汎用的・基礎的能力」であるために、具体的に何をしていいか分からず、結局現場に丸投げ。結果として、生徒の進路選択は個人の自己責任に帰している現状分析はさすがの一言である。



 

 究極的には文部科学省の求める「キャリア教育」は、社会に出ていく以上必要です。ただし、その教育の範囲を無尽蔵に拡大するのではなく、社会科にできること、高等学校でできること、など限定してとらえていくことが重要なのかな、と感じるこの頃です。現場に出たら、自分の専門性でできる「キャリア教育」を模索していけたらな、と思います。




 個人的には、キャリア教育を考えている人にはぜひ読んでほしい一冊です。

教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)

教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)