青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

中等教育社会科教師の専門性育成

 

 卒業した母校の先生方が執筆している、中高の社会系教科の授業をいかに作り、いかに教えるかについての本。とりわけ2022年より社会系科目は高等学校で大幅な科目再編が行われることもあり、全面改訂が行われたようです。

 相変わらず我が母校らしい、それぞれの先生方の個性の光るオムニバス形式の本になっていますが、一つ一つのテーマは、現代の課題に即した編成となっています。

 特におすすめなのが第5章の渡部竜也先生の書いた「社会科の主な授業構成論」と第20章の堀田諭先生の書いた「カリキュラム・マネジメントとカリキュラムづくり」。

 第5章は、学生の会話形式で、「よい」と考える授業(ここでは歴史授業を事例にしているが)が異なることが示される。その上で、「問題解決」「共感理解」「科学的探求」「討論」「学問的思考」、そして「知識伝授」、それぞれが「よい」と考えられる理由があり、課題があることが明示される。ここで重要なのは、生徒の学習文脈や学習背景、レリバンスなどによって、それらをうまく使い分けることだろう。そういう意味で、とても有意義なページとなっている。

 第20章は、カリキュラム策定においては、「文脈」「内容」「同僚性」「教育のビジョン」の4つが有機的に関連されて作られることの重要性が示されている。その事例として、中高それぞれの先生が、「総合」のカリキュラムをいかに構成したのか、について論じられている。一見すると社会科ではなさそうに見えるが、今次学習指導要領や、ニューマンの述べる「学校外の価値」という視点に注目すれば、こうした視点から社会科を捉えなおす視点も重要であると考える。

 その他、地理総合や歴史総合に関しては、いち早く文部科学省の指定を受け先行実践を行った神戸大学附属中等教育学校の先生が執筆しており、具体的な単元事例とともに地理総合や歴史総合の具体を知ることができる。

 これらのページを読むだけでも、この本には一読の価値があると感じる。

 もちろんこれ以外にも、それぞれの先生が具体的な事例を踏まえて、これからの社会系教科についてまとめているので、社会科の教員を目指す人の基礎研究として、またすでに現場で教えている先生にとっては、自分の実践を見直す機会となる本となるだろう。