青い森のねぷたいブログ

青い森です。東京の某所で教職についています。教職に関することを主につぶやいていきます。

5月に買った本③

  ここ数日で2冊の教育に関する本を買った。

  一つは、元麹町中学校校長の工藤勇一先生の本

 

 もう一つは、教師教育やセルフスタディ研究で有名な武田信子先生の本である。

 

 この2冊の本、アプローチは違えど、主張していることは共通しているように感じた。以下、自分の読んだ感想であることをご承知の上で読んでいただきたい。

 

 

 この2冊の本に共通していること、それは現在の社会情勢によって、子どもが「自律」(自分で考えること)がなおざりとなっている。それは、武田先生の言葉を借りれば、教育のマルトリートメント、より具体的に言えば、大人が子どもに対して教育を「しすぎている」ことにあるという。

 

 武田先生の本では、それを社会的背景から説明している。すなわち、社会的格差が進行していく中で、子どもには「成功していてほしい」と塾に行かせ、いわゆる「偏差値の高い」学校に入学させるために投資をしていること、その結果、子どもの自主性や自律性が失われ、「子どもたちをブロイラーのように商品化する」ような現象が起きているという。

 

 

 また、工藤先生の本の中では、脳科学の知見から、子どもが安心できる環境を作ること、失敗を許容できる環境を作ること、子どものメタ認知能力を鍛えること(具体的には、子どもに「反省」させないこと)などが重要であると指摘されている。

 

 

 武田先生はどちらかといえば、外的要因(社会的要因)の立場から現在の子どもがおかれている教育の問題を示しており、工藤先生はどちらかといえば学校内で具体的にできること、の立場から子どもへのアプローチの仕方を示している。

 

 

 しかし、どちらにも、「子どもにも人権があり、自分で意思決定する権利があり、そうした子どもなりの意思決定を大人は見守ることが重要である」という主張は共通しているように感じた。いわゆる「子どもらしさ」をもっと見直そう、という議論である。

 

 

 確かに、今の子どもは変に大人びているし、達観しているし、成績を人一倍気にするし、自分の立ち位置をすごく気にする。でもそれは、子どもというよりは、それを照射する大人側の課題がそのまま子どもに反映されていると考えるべきであると思う。

 

 

 これは2000年代以降、進められてきた教育の資本主義化、自由主義的改革、結果至上主義的改革の効果が色濃く出ているんだろうな、と感じる。

 だからこそ、そこに気づいている二人の先生が、図らずも異なるアプローチで、もっと「子どもの意思決定」を見直していこうよ、と主張しているように感じている。

 

 

 

 とはいえ、子どもを「見守る」ってすごく難しい。こちら側が手を差し伸べた方が楽なことはいっぱいある。それでも今は、「見守る」ということ、子どもに自分の行動を意思決定させるアプローチが重要であると思う。(この方法は、工藤先生の本を読むと具体的に書いてあります)

 

 

 自分も今年から担任になったし、この本の内容を肝に銘じて、子どもたちに意思決定をさせること、それを「見守る」ことを意識していきたいと思っている。幸い、入学式や最初のオリエンテーションで、担任している生徒たちが、自分の「言葉」や「意思」をしっかり持っている人たちだなあ、ということは感じているので、担任としては安心してそれができている。あとは、こちらが間接的にでも、思っていることや考えていることを、文字にして表出しながら、受け止め方は彼らに任せながら、一年間やっていこうと思っている。そして、それを基礎にして三年間過ごしてほしいな、と思っている。

 

 

 

 いずれにしても、2021年現在の教育的課題をふまえ、社会的にできること(武田先生)、学校現場で心がけること(工藤先生)、を書いているので、ぜひとも読んでみてほしいです。